研究概要 |
本研究では種々の悪性骨軟部腫瘍における細胞周期制御遺伝子(p53,MDM2,p14/ARF,RB,p16/INK4a,p21/Waf1,p27/Kip1,cyclin D1,cyclin E,CDK2,E2F)および蛋白発現の異常を調べ、特定の腫瘍で特定の遺伝子あるいは蛋白発現に異常が認められるか、またその異常と臨床病理学的事項との関係はどうか検討し、以下のような結果を得た。平滑筋肉腫;p16蛋白発現減弱例は単変量解析および多変量解析において有意に予後不良であり、p16蛋白減弱の機序は主にプロモーター領域のメチル化によるものと思われた。(Kawaguchi et al. J Pathol 2003)胞巣状軟部肉腫;hMLH1/hMSH2の発現減弱が胞巣状軟部肉腫の癌抑制遺伝子変異に関与している可能性が示唆された。(Saito et al. Hum Pathol 2003)粘液線維肉腫;p21 LI低値が粘液線維肉腫における従来の臨床病理学的予後因子に加えて新たな予後因子になり得ると思われた。(Oda et al. Hum Pathol 2003)骨巨細胞腫;局所破壊性が強く2%の症例に肺転移を起こす骨巨細胞腫においてはTGF-beta IIRはおもにp27を介して細胞増殖を制御している可能性が示唆された。(Kawaguchi et al. Hum Pathol 2004)隆起性皮膚線維肉腫;隆起性皮膚線維肉腫からより高悪性度の線維肉腫への進展に際してマイクロサテライト不安定性(MSI)は早期に関与し、p53遺伝子異常は晩期に関与している可能性が示唆された。(Takahira et al. Hum Pathol 2004)横紋筋肉腫;p53蛋白過剰発現している腫瘍において高い増殖活性がみられ、p53蛋白過剰発現が腫瘍の進展に関連している可能性が示唆された。また、胞巣型においては胎児型よりも核分裂像が多く、高いE2F-1の標識率を示した。(Takahashi et al. Mod Pathol 2004)明細胞肉腫;悪性黒色腫同様に明細胞肉腫においてもp16INK4a/p14ARF経路の異常がtumorigenesisに関与している可能性が示唆された。(Takahira et al. Cancer Sci 2004)脱分化型脂肪肉腫;脱分化の現象には、LOH、メチル化、遺伝子異常などのなんらかのRB1遺伝子異常が関与している可能性が示唆された。(Takahira et al. Mod Pathol 2005)粘液型/円形細胞型脂肪肉腫;粘液型/円形細胞型脂肪肉腫の悪性化および進展にはp14/p53経路の異常が関与している可能性が示唆された。(Oda et al. J Pathol 2005)悪性末梢神経鞘腫瘍;(Checkpoint with forkhead-associated domain and ring finger:以下CHFR)発現減弱例は高い核分裂数、高いKi-67 labeling indexと有意に相関し、さらに予後不良因子であった。これらの結果は、CHFRが腫瘍増殖に対する抑制因子であるという仮説を支持するものである。(Kobayashi et al. Mod Pathol in press)
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