研究概要 |
乳腺に原発する悪性リンパ腫がなぜ予後不良かを解明するために乳腺に発生したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL)のうち,乳腺腫瘤のみと乳腺腫瘤と同側の腋窩リンパ節に病変を持つ症例を乳腺原発DLBCL(stages I&II)として解析した. 免疫組織化学:CD3;0/15(陽性数/検索数),CD5;2/15,CD10;0/15,CD20;15/15,Bcl-2;10/15,Bcl-6;5/15,IRF4/MUM1;15/15.MIB-1 index 59.5%〜95.2%,平均79.2%. 遺伝子解析:7例について免疫グロブリン遺伝子重鎖可変領域のsomatic mutation解析を行い,mutation頻度は1.43〜10.29%を示した.5例についてongoing mutationの有無を解析したがいずれの症例にも認められなかった。 以上の結果から乳腺原発悪性リンパ腫はDLBCLの予後不良群であるCD10^- Bcl-6^<+/-> IRF4/MUM1^+ non-germinal center B cell DLBCL群に属し,さらに腫瘍の増殖力に関係するMIB indexが高値を示すことがわかった.これらのリンパ腫細胞の生物学的な所見が臨床病理学的に予後不良であることに関連していると考えられた. さらに乳腺原発DLBCLが高い増殖性を示す理由を明らかにする目的で乳腺原発DLBCLと節性DLBCLをそれぞれ4例づつ選択し,凍結標本からmRNAを抽出してhuman 10K oligotipを用いたcDNA microarrayにより多数の遺伝子発現を2群間で比較検討した.その結果,乳腺原発DLBCLと節性DLBCLでは発現パターンの違いを認めた.また,Bcl-6発現の有無により異なるパターンを示す可能性も併せて検討中である.
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