研究概要 |
1)Ishikawa細胞に変異型β-カテニン遺伝子をtransient transfection法で導入後、β-カテニン及びp53抗体で二重染色し蛍光顕微鏡で観察すると、β-カテニン過剰発現細胞で、内因性p53蛋白発現誘導が確認できた。 2)活性型β-カテニン/TCF複合体はp53上流遺伝子であるp14ARFのpromoter活性をTCF4依存性に亢進させ、結果としてp53下流遺伝子のp21WAF1の発現が亢進した。 3)Ishikawa細胞で、変異型β-カテニン遺伝子を恒常的に発現する細胞株を作成した。この細胞はコントロール細胞(mock)に比べ、p14ARF,p21WAF1,p53,cyclin D1の発現が亢進していた。又、形態学的に、細胞質が広くなり平面的な変化からなるsenescence様細胞の増加が認められた。 4)テトラサイクリンシステムを用いて変異型β-カテニン遺伝子発現誘導系を作成した。この結果、変異型β-カテニン発現誘導と一致してその転写活性の増加とその下流遺伝子(cyclin D1,p14ARF等)発現が生じ、さらに、X-gal陽性を示すsenescence細胞の増加を認めた。 5)臨床検体の内膜癌組織では、増殖能を欠く扁平上皮化生巣に一致して核内β-カテニン、p21WAF1,p53,cyclin D1の陽性所見を認めた。 以上の結果から、変異型β-カテニン過剰発現はp14ARFのTCF binding siteを介してp14ARFの発現を誘導する。p14ARFはp53遺伝子発現を誘導し、p53/p21WAF系が活性化し、結果として細胞周期の停止作用及び扁平上皮様の形態変化をきたすことが示唆された。
|