研究概要 |
ブドウ球菌エンテロトキシンA (SEA)は黄色ブドウ球菌の産生する菌体外タンパク質で催吐活性を示す一方、スーパー抗原活性を有することが知られている。しかし、SEAによる食中毒のメカニズムはまだ明らかにされていない。本研究では、我々はrecombinant SEA (rSEA)及びmutant SEA (mSEA)を作製し,スンクスに対する嘔吐活性と催吐活性部位を調べした.さらに,ヒト腸管上皮細胞内Ca2+シグナルへの影響について検討した。 腸管上皮細胞Henle 407をcover slip上で48時間培養し、Fura-2で35分ロードした後、SEAで刺激し、細胞内Ca2+濃度変化を倒置蛍光顕微鏡測定システムにより測定した。一部の実験ではRp-cAMP,U73122,L-NMMAを添加し,その影響を調べた。また、細胞のNOS発現についてRT-PCR法により調べた。さらに,rSEA及びmSEAのスンクスに対する嘔吐活性を検討した. 腸管上皮細胞はSEA刺激により細胞内Ca2+濃度が上昇した。Ca2+free細胞外液においても、同様にCa2+濃度の上昇がみられた。次に、上皮細胞をRp-cAMP、U73122またはL-NMMAで処理し、SEAで刺激後の細胞内Ca2+濃度を調べた。Rp-cAMP及びU73122はSEAによるCa2+濃度の上昇を抑制できなかったが、L-NMMAはCa2+濃度の上昇を明らかに抑制した。Henle 407細胞はeNOSを発現し、また、SEA、TNF-αの刺激によりiNosの発現が誘導された。さらに、TNF-α処理細胞をSEAで刺激したところ、未処理細胞より、Ca2+濃度は顕著に増加した。これらの結果から、腸管上皮細胞はSEA刺激によりCa2+storeからCa2+を放出し,細胞内Ca2+濃度が上昇したと考えられる。細胞内Ca2+濃度の上昇に、eNOS及びiNOSが関与していることが示唆された。スンクスに対するrSEA及びmSEAの催吐活性を検討した,SEA分子上のスーパー抗原活性と嘔吐活性が完全に一致しないことが示唆された.
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