研究課題
基盤研究(C)
黄色ブドウ球菌γヘモリジンはHlg1(34kDa)とHlg2(32kDa)から成る二成分性溶血毒素である。我々は、γヘモリジンの二成分がヒト赤血球膜上で外径9nm、内径3nmのリング状複合体を形成し、この複合体が実効内径2nmの膜孔として作動して溶血を起こすことを示した。さらに、電子顕微鏡および化学的架橋剤を使用した研究により、膜孔複合体はヘプタマーであり、二成分はモル比3:4または4:3で交互に配列していると推定した。本研究では、(1)nanogoldでラベルしたグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)を融合したGST融合Hlg1(またはGST融合Hlg2)とwild typeのHlg2(またはwild typeのHlg1)から膜孔複合体を形成させ、電子顕微鏡を使用して膜孔複合体中のナノゴールドを観察することで毒素2成分の分子配列の可視化、(2)電子顕微鏡による立体構造の解析を試みた。(1)GST1分子当たり1個のナノゴールドを結合した融合毒素を作製するために、GSTに含まれる4個のシステインの内(138番目のシステインを除く残り)3個をアラニンに置換した組換え体GSTを作製した。現在、ナノゴールドによってラベルした融合毒素と未結合のナノゴールドを分離する方法について検討中である。また、(2)本毒素複合体は2成分を3:4または4:3で含むために、X線結晶回折による3次元構造の解明は困難であると予測されるために、ヒト赤血球膜から単離した膜孔複合体をネガテイブ染色して透過型電子顕微鏡によって立体構造の解析をおこなった。その結果、膜孔複合体は直径約3nmの細長いモノマー分子が平行に並び、高さ約10nm、横幅約9nmの構造であることが明らかになった。様々な角度から撮影した像から、γヘモリジンの膜孔複合体は、黄色ブドウ球菌の1成分溶血毒素αヘモリジンの立体構造に類似したマッシュルーム状の形態を有することが示された。
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