研究課題
基盤研究(C)
「ヒトエーリキア症」病原体のAnaplasma phagocytophilumと」Ehrlichia chaffeensisは1990代に入ってから発見された新興感染症であるため、これらの病原体の細胞内寄生機構についての知見は乏しい。A.phagocytophilumはヒト顆粒球内で増殖し、またE.chaffeensisはヒト単球内で増殖する。本研究では、これら細菌の細胞内寄生性機構に関与する宿主側の応答タンパク質を、蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動(2D-DIGE)とMALDI-TOF/TOF-MSによるペプチド質量分析を用いて網羅的に解析した。非感染細胞と感染細胞との比較解析から、双方間で量的差異が認められたタンパク質スポットの総数286個を得た。このうち、感染細胞のみに見られたスポットは病原体由来のタンパク質で、また非感染細胞のスポットの位置と蛍光強度を基にして感染細胞で量的増減が見られたスポットは宿主細胞由来のタンパク質である。よって、主に宿主側のタンパク質スポットのペプチド質量分析から、およそ154個のタンパク質種の同定に成功した。さらに、感染細胞内のタンパク質変動を経時的に(感染後1〜3日間)追究したところ、感染による酸化ストレスを消去すると思われるPRDX3や細胞骨格の再構築を誘発すると思われるCAPGなどのタンパク質の経時的な増加現象を捉えた。現在、このような感染により変動するタンパク質について、MetaCore Pathway Analysisを用いたタンパク質間の相互作用やRNAiによる発現制御時の感染状態の解析を進めている。これにより細胞内寄生性機構と密接に関連する宿主側のタンパク質分子が明らかになると期待される。
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