研究概要 |
[目的]敗血症は救急救命治療の発達した先進国においてもいまだ高頻度に致死的経過をたどる重篤な病態であり、その多くにグラム陰性菌感染が関与している。グラム陰性菌由来の病因物質であるエンドトキシン(LPS)は、単球・マクロファージMφによるTNF-α、IL-1β、NOなどの産生を誘導し、敗血症性ショックの発症に深く関わっている。一方、敗血症では、LPS刺激によって好中球のアポトーシスが抑制され、活性化された好中球が組織障害、さらに、多臓器不全の進展に関わっている。申請者は、これまで好中球由来の内因性防御因子・CAP11が、エンドトキシンショックにおいて防御的に働くことを明らかにしてきた。そこで、本研究において、LPS刺激による好中球のアポトーシス抑制に注目し、そのメカニズムを解明し、さらに、それに対するCAP11の効果を検討した。 [結果]好中球のアポトーシスをannexin V-FITCとpropidium iodideによる蛍光染色・Flow cytometry法で検出したところ、LPS刺激によって好中球のアポトーシスが抑制された。そして、CAP11の添加によってLPS刺激による好中球のアポトーシス抑制が顕著にブロックされ、アポトーシスが誘導されることがわかった。さらに、単球をLPSで刺激すると好中球のアポトーシスを抑制するIL-1β,TNF-α,IL-8などのサイトカインが生成された。そして、CAP11は単球によるIL-1β,TNF-α,IL-8などのサイトカイン生成を阻害して好中球のアポトーシスを誘導することがわかった。さらに、CAP11は好中球、単球へのLPSの結合を著明に抑制した。 [結語]今までの研究によって、CAP11が強力なLPS結合能をもつことが示されている。したがって、CAP11はLPSに結合することによってLPSの好中球、単球への結合を阻害し、その結果、LPS刺激による好中球の活性化を抑制し、また、単球によるサイトカイン生成を抑制して、好中球のアポトーシスを誘導するという作用機序が考えられる。
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