研究課題
基盤研究(C)
現在、HIV-1感染患者において延命効果を上げているHAARTにおいて、要となる薬剤であるHIV-1プロテアーゼ阻害剤(PI)は元来、欧米で流行してきたサブタイプBのウイルスプロテアーゼ(PR)をターゲットとしてデザイン及びテストされてきた。HAARTが導入されつつある西アフリカで流行中のHIV-1サブタイプは主にA・GまたはA/G組換え型であり、PIに対して感受性を示すか否かは不明である。そこでまず我々が先頃構築した、HIV/AIDS患者由来のPRを挿入できるHIV-1 PRカセットベクターを用いて、ガーナ国内の未治療HIV-1感染者39人由来のHIV-1 PR遺伝子をPCR増幅・制限酵素処理して、患者由来PR組換え型HIV-1 DNAを作製した。それら各PR遺伝子のシークエンスを行い、ガーナ株由来PRの各アミノ酸配列とサブタイプBコンセンサス配列のマルチプル・アラインメントにより、既知のPI耐性誘導変異箇所との比較を行った。その結果、低レベルではあるものの耐性誘導に関わる2箇所の変異が、全てのガーナ株PRに共通して、またそれ以外に別の2箇所の低レベル耐性誘導変異も比較的高頻度に認められた。遺伝子系統樹を作製した結果、ガーナ株PR遺伝子は全てサブタイプAとGの中間のグループに属することが判明した。またB・D・FおよびCは比較的近縁グループに属しているのに対し、A・GおよびA/C組換え型はそれらのグループから系統樹的にかなり離れたところに別のグループを形成することが明らかになった。次に各HIV-1 PR組換え型ルシフェラーゼウイルスDNAを用いて、6種類の異なるPIの存在下で293T細胞に導入した。得られた各ウイルスをCD4陽性細胞株MAGIC-5Aに感染、細胞溶解液を回収した。細胞内ルシフェラーゼ活性の測定により個々のウイルスの感染性を定量化、サブタイプB対照株であるNL4-3との比較によりIC50(及び90)比を求めた。その結果、ネルフィナビル=ロピナビル>インディナビル>サキナビル>リトナビル>アンプレナビルの順で、ガーナ株PRにおいてPI感受性が低下していることが明らかになった。次に、PRの立体構造モデル及びPIとのドッキング・シミュレーションによる酵素-薬剤複合体モデルを作製して、ガーナ分離株とサブタイプBのPR構造比較を行ったところ、PRの主鎖に大きな違いは認められないものの、側鎖においてガーナ分離株でズレが認められた。更にガーナ株PRの活性中心部のポケットに結合しているネルフィナビルにおいて大きな歪みが生じていることが判った。以上の結果より、AG株が蔓延している西アフリカにおいてHAARTを導入する際、治療開始前にPIを選択しておく重要性が示唆された。
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