研究概要 |
我々は接着斑キナーゼ(FAK)過剰発現細胞を用いFAKの抗アポトーシス機能を明らかにしてきた。さらにFAK過剰発現細胞における新規なシグナル伝達経路を見い出した。すなわちFAKからのPKCα,β,ηの活性化、それに続くcyclinD3の上昇を証明した。本研究ではFAK過剰発現細胞で上昇するタンパク質を二次元電気泳動により解析、同定を進めた。抗アポトーシス機能に関連する数種のタンパク質hsp70,peroxyredoxin 2,Rho-GDIなどの発現上昇を確認した。これらのタンパク質の同定はN-末アミノ酸シークエンサー、MALDI-TOF/MS,LC/MS/MSにより行った。これらのタンパク質はmRNAレベルでも発現上昇しており、FAKの活性化阻害剤PP2で阻害されることによりFAKの下流で制御されている転写因子が関与していることが示唆された。またFAK過剰発現細胞では活性酸素除去系が活性化していることがわかった。これらの結果を裏付けるようにFAK過剰発現細胞では過酸化水素による膜脂質の酸化が阻害されていた。また、FAK過剰発現細胞ではTRAILに対しても抗アポトーシス機能を有することを見い出した。この機序について調べたところ、caspase-8の発現が減少していた。次にcaspase-8プロモーターに結合する転写因子の関与をゲルシフト分析により調べたところ、caspase-8の転写活性化に必須のSP1が全く活性化していないことを確認した。TRAIL受容体、caspase-8より下流のシグナル分子であるTRADD, FADDの発現には変化がなかった。FAKsiRNAでFAKの発現を抑制するとcaspase-8の発現が上昇し、TRAILに対しても感受性を回復しアポトーシスをおこした。これはFAK過剰発現のためにcaspase-8の発現抑制がおきたことを示すものである。
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