研究概要 |
1)閉塞性胆汁うっ滞(OJ)時におけるABCトランスポーターの発現の臓器相関:ラットに胆管結紮を行い経時的な血清生化学検査および肝、腎、小腸におけるABC transporterの発現を観察した。MRP2の発現は肝において1日目から低下したが、腎においては1日目には上昇し、3日目以降に低下した。小腸においては7日目において発現は著増した。MRP3の発現は肝において著増したが腎、小腸においては有意は変動はみなかった。BSEPは肝において有意は変動はみなかった。MDR1bは肝において発現増加を見なかった。OJ群の血清胆汁酸(BA)は1日目に上昇したが、3日目以降には1日目に比して低下した。肝臓におけるFxr,Shp,Lrh-1,Pxr,Carの発現は変化しなかったが、小腸においては、Shp発現は低下した。OJにより尿へのpara-aminohippurate(PAH)排泄およびBA排泄は著増しており、3日目以降のBA濃度減少は腎からのBA排泄増加によると考えられているが、本検討における小腸MRP2発現の増加は小腸におけるBA排泄も寄与している可能性がある。2)肝内胆汁うっ滞時におけるABC transporterの発現の臓器相関:肝内胆汁うっ滞モデルはラットにethinylestradiol(EE)投与を行った群(EE群)、EE投与に加えdiosgenin投与を行った群(DE群)により作成した。血清生化学パラメーター、胆汁中へのビリルビン,BA排泄により、DE群はEE群に比して胆汁うっ滞の程度は増強されている事が明かとなった。MRP2の発現は肝、小腸においてEE群、DE群ともcontrolに比して有意差はなかった。結紮1日目から低下したが、MRP3の発現は肝においてEE群、DE群とも著増しており、小腸においても両群とも軽度増加していた。BSEPは肝において有意は変動はみなかった。MDR2は肝臓においてDE群に、おいて発現増加を見た。3)まとめ:胆汁うっ滞時には尿へのPAH排泄およびBA排泄は著増しており、血清BA濃度減少は腎からのBA排泄増加によると考えられているが、小腸MRP2発現の増加は小腸におけるBAを含む有機陰イオン排泄も寄与している可能性を示唆している。
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