研究概要 |
微生物学検査の精度保証(QA, Quality Assurance)や外部精度アセスメント(EQA, External Quality Assessment)は,欧米の先進諸国では,専門的・学問的な重要性が強く認識されているが,日本の微生物学や感染症関連の専門書・教科書などには,ほとんど記載がない.平成15年度は「臨床検査に係わる外部精度管理調査についてのアンケート調査」を,(1)全国都道府県衛生研究所および(2)日本臨床微生物学会会員である180名の認定臨床微生物検査技師全員を対象として実施した.この調査結果では,地方衛生研究所の置かれた厳しい状況と地方EQAに関する認識不足が明らかになった.臨床検査技師からは多彩な意見が収集できたが,項目によっては全く対立する見解もあった.また,(3)全国から選抜した20名の認定臨床微生物検査技師を中心にした「ワークショップ:WS」を開催した.WSのプロダクトの一部は中間報告書としてまとめた. 平成16年度は,(4)「臨床検査に係わる外部精度管理調査についてのアンケート調査」を,「都道府県臨床衛生検査技師会」を対象に実施した.地方の技師会の全てが地方EQAに関しての役割を認識しているとは判断できなかった.また(5)認定臨床微生物検査技師,行政関係.臨床微生物検査関係の試薬メーカー研究員によるWSを開催した.このWSでは,わが国における臨床微生物検査のEQAに関して,(1)参加者のモラルハザード,(2)大学関係者のEQAへの無関心,(3)配布試料としての凍結乾燥菌株の供給施設が国内にないなど,重大な問題点が確認された.すなわち2年間の調査研究で,わが国における臨床微生物検査外部精度管理の現実は,日本医師会を中心とするNEQAS構想の崩壊に象徴されるように,英国やカナダの先進国に比べ相当に遅れていることが明らかになった.このように多くの制約事項のある中で「EQAの改善プランニングに関して現実的な方策」をまとめ最終報告書を作成した.
|