研究概要 |
実験室内における心理実験,および,幹線道路沿道における質問紙調査の結果に基づいて,騒音感受性を評価するための各種質問群の妥当性を検討した。 心理実験では,被験者に様々なレベルのピンクノイズを曝露し,その「うるささ」を評価させることで,騒音レベルとの量反応関係を検出し,各被験者の騒音感受性を評価した。曝露実験で得られた騒音感受性と各種感受性評価尺度との関係を検討したところ,広く用いられているWeinstein尺度を構成する質問には,騒音感受性を評価する上で必ずしも適切でない質問が含まれており,4つの質問を除くことで,より妥当な感受性評価が可能となるいることを明らかとした。さらに,回答者が大げさあるいは控えめに回答することによる影響を低減するために,回答のコーディング方法の改良を行った。 幹線道路沿道での質問紙調査では,各種騒音感受性尺度と各住居の騒音曝露レベルとの関係を分析した。その結果,Weinstein尺度の中に不適切な質問が含まれていること,また,改良されたWeinstein尺度によって,より妥当な騒音感受性評価が可能となることを再確認できた。 道路交通騒音による影響として,GHQ質問票に基づいた神経症の有病率や,生活満足感,道路交通騒音のうるささなどを指標とし,騒音曝露量との間の量反応関係に及ぼす騒音感受性の影響を解析した。その結果,神経症の有病率について,騒音感受性を考慮せずに全回答者を対象に解析を行った場合,統計学的に有意な関連は認められなかったが,改良された騒音感受性尺度を用いることにより,高感受性群において顕著な量反応関係が検出された。このことは,騒音感受性を考慮して騒音の健康リスクを評価することの有効性を示している。
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