研究概要 |
研究代表者の荒木克夫が、実験計画の立案、研究の実施、結果の評価、および報告論文の作成にあたった。今回の研究では、1)胆汁酸の有する強い腸管上皮膜透過性亢進作用における細胞内シグナリングの役割についての検討、2)硫酸化多糖体の生体内、特に腸管内における代謝の検討を行った。具体的には1)胆汁酸の腸管上皮膜透過性亢進作用にはMAP kinase, ERK kinase, protein kinase C, cyclooxygenaseなどの細胞内酵素蛋白質の活性化と活性酸素が深く関与している事を見出した。この成果は欧米紙に投稿し、出版中である。2)についてであるが、動物炎症性腸疾患モデルはこの硫酸化多糖体を経口投与することで惹起される。我々はこの硫酸化多糖体の生体内代謝解析は炎症性腸疾患の病因に係わる大きな意味を持つと考えた。しかし現在まで硫酸化多糖体の生体内代謝、動態はほとんど分かっていない。その理由の一つとして代謝物分析の困難さがあった。我々は初めて硫酸化多糖体を2-amynopiridineを用いて蛍光標識し、高速液体クロマトグラフィーにより検出する技術を開発し報告している。この技術を用いて硫酸化多糖体の生体内代謝について検討した。具体的には蛍光標識化硫酸化多糖体をSDラットに投与し、経時的に血中、消化器管内の代謝物を化学的に抽出する。更にこの抽出物を我々が開発したゲル濾過カラムと逆相カラムのコンビネーションカラムを用いて、分離し蛍光光度計にて検出し、その化学構造、分子量を飛行時間型マススペクトロメトリィーを用いて解析した。これにより、蛍光標識化硫酸化多糖体が体内で分解を受け腸管上皮に吸収され腸炎を惹起していく過程を捕らえることができた。以前より硫酸化多糖体は体内で分解されないと思われていただけに、この常識を大きく変える発見である。現在このデーターを欧米紙に投稿中である。
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