研究概要 |
経口的な脂肪の過剰摂取が大腸の発癌の重要な要因であることは疫学的に明らかにされているが,その機序を解明するためのin vivoの研究をするための有用なモデルが少ない。アゾキシメタン投与ラットに中性脂肪を長期過剰投与することで粘膜内癌から浸潤癌に伸展させることが可能となった。さらに,大腸癌の伸展に重要な因子の検討,どのような脂肪食が大腸発癌により関与するかの検討,等により脂肪食による発癌機構の解明が可能である。 生後4週目と5週目にアゾキシメタン15mg/kgを腹腔内に投与したラットにω6不飽和脂肪酸を多く含むコーン油10%を48週間経口的に摂取させた。脂肪摂取群では週齢とともに,大腸にアベラントクリプト⇒ポリープ状の腺腫⇒粘膜内癌(高分化型)⇒浸潤癌(高分化型)の病変が発現してくる。高脂肪食+アゾキシメタン投与ラットにおける浸潤癌発生までの過程でどのような因子が重要なのかを解明した。さらに大腸粘膜の細胞増殖機構やアポトーシスへの影響を同時に検討し,アポトーシスを誘導する酵素であるカスパーゼやBcl-2,Bcl-Lxの発現の差を評価した。コーン油に加えて,i)オリーブ油等の他の植物油,ii)飽和脂肪酸を多く含む動物性油,iii)ω3不飽和脂肪酸の含む魚油,等の慢性経口メ投与実験を施行した。 1)10%のコーン油の長期投与はアゾキシタンによる大腸発癌性を増強させた。2)機序には大腸粘膜のアポトーシスや腫瘍抑制遺伝子の関与が考えられた。3)飽和脂肪酸の投与では同様の結果が得られた。4)オリーブ油や魚油の投与では,発癌性は抑制された。 今回の結果は動物実験モデルを用いて脂肪摂取と大腸発癌の関連を明確にしたものである。さらに,その機序を解明するとともに,与える脂肪内容により大腸癌発癌に与える影響は異なることを証明した。
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