研究課題
基盤研究(C)
【目的】本研究では、多数の潰瘍性大腸炎(UC)患者を対象にaberrant crypt foci(ACF)を観察し、UC患者の発癌におけるバイオマーカーとしての有用性を解析するとともに、その遺伝子解析を行った。【方法と結果】(1)ACFの観察ACFは、既報に従い直腸にメチレンブルーを散布し、拡大内視鏡を用いて観察した。UC患者28人を対象とした。その結果、非UC患者のACFに比べて個々のクリプトが不鮮明に染色されるACFが1例を除く27例に観察された。dysplasiaを伴わないUCではACF様病変数は平均6.6個と多く、dysplasiaを伴うUCでは平均13.6個とさらに増加していた。(2)ACFとUC患者の各背景因子との解析UC患者のdysplasiaを有する者と有しない者について、ACF数、性差、年齢、発症年齢、罹病期間、罹患部位の相関性を単変量解析により検討したところ、罹病期間とACF数に有意な相関を認めた。同様に、多変量解析でも認めた。(3)UC患者のACFにおけるAPC及びK-rasの解析APCのC末端に対する抗体を用いて免疫組織染色を行ったところ、いずれのACFも染色陽性であり、APC変位は認められなかった。Two-step PCR RFLP法により、K-ras変異の有無を検討したところ、UC患者のACFではわずか15%に変異が認められた。(4)UC患者のACFにおけるp53変位及び遺伝子不安定性(MSI)の解析P53遺伝子のExon 6,7,8,9についてSSCP法により変異の有無を検討したが、いずれも変異は認められなかった。同様に、PCR-SSCP法により、MSIを検討したが、いずれも異常を認めなかった。(5)p16遺伝子のメチル化p16のメチル化の有無をmethylation specific PCR法にて検討した。UC患者のACFとdysplasiaでは、いずれも高率にp16のメチル化を認めた。【結論】UC患者のACFは、dysplasia、ひいては癌を発見するための有用なバイオマーカーになりうることが示唆された。また、ACFは、p16のメチル化により形成され、p53変異が加わることにより、dysplasiaに進展することが示唆された。
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