研究課題
基盤研究(C)
昨年度までの検討で、ヒアルロン酸グラフト化ポリLリジン櫛形共重合体(PLL-g-HA)は核酸製剤を類洞内皮細胞に選択的に送達しうることが示された。しかし、プラスミド導入による遺伝子発現系では、リポーター遺伝子発現レベルが低値・短時間にとどまり、in vivo実験に用いるためには発現効率の改善が必要と考えられた。この問題を回避するために、RNA干渉、3重鎖DNAなと、オリゴ核酸とPLL-g-HAの組み合わせによる遺伝子工学的操作を目指して、siRNA等オリゴDNAとのナノ会合体形成、3重鎖形成オリゴ核酸(TFO)を用いた3重核酸形成能の面から、PLL-g-HA分子の最適化を行った。その結果、PLL-g-HAは従来の方法に比しより効果的に3重鎖核酸形成を安定させ、一種の人工分子シャペロンとして働くことが明らかとなった。また平成17年度では、類洞内皮細胞の再生による難治性病態の冶療を企図し、GFPトランスジェニックマウス由来の骨髄細胞を四塩化炭素誘発肝障害マウスに移植し、類洞内皮細胞への分化誘導を検討した。その結果、比較的軽度の障害惹起条件では、多くのGFP陽性細胞の類洞内皮への分化を認めた。類洞内皮細胞への分化およびその細胞死に関わる遺伝子を探索するために、あらかじめsiRNAもしくはリボザイムライブラリを類洞内皮細胞に導入しておき、細胞分化あるいは細胞死シグナルを与えた際、応答の変異・細胞死回避を示す細胞から得られた切断核酸配列を指標(inverse genomics)としてスクリーニングを行い、機能遺伝子の同定を試みた。同様の手法を用いた肝星細胞死に関わる遺伝子解析が先行しており、10の新規遺伝子候補を得たが、類洞内皮細胞においても同様の解析を現在進めている。
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