研究課題
基盤研究(C)
多くの消化器腫瘍で高発現をみるが、正常組織での発現が限定的なミッドカイン遺伝子の5'側上流604bpの転写調節領域を用いて、アデノウイルスのE1A発現を制御するウイルスを構築した。このウイルスをヒト正常繊維芽細胞および、同細胞を変異型p53遺伝子導入によって不死化した細胞に感染させて、E1A遺伝子発現を検討したところ、野生型のアデノウイルスに比較して、不死化した細胞においてのみ強い発現を示した。また、実際の細胞傷害活性も、ミッドカインプロモーター挿入ウイルスは、不死化細胞をより強く傷害した。すなわち、この改変型ウイルスは腫瘍融解性を有することが示唆された。そこで、他のヒト正常繊維芽細胞とヒト肝臓がん細胞を用いて、細胞傷害活性を検討すると、この改変型ウイルスは正常繊維芽細胞に比較してヒト肝臓がん細胞を、約500倍もの低いmultiplicity of infectionで傷害し、肝臓がん細胞における同ウイルス増幅は正常繊維芽細胞より1000倍も高いことが判明した。そこで、ヒト肝癌HuH-7細胞をSCIDマウスに接種し、腫瘍を形成させた後、その腫瘍局所に当該ウイルスを投与した。その結果、コントロールの非増殖型のアデノウイルス投与群に比較して、当該ウイルスを投与した腫瘍では、その後の腫瘍増殖が著しく抑制されていた。組織学的には当該ウイルスを接種した腫瘍において多くの壊死像が観察されたが、コントロールウイルス投与腫瘍ではそのような変化は見られなかった。したがって、当該ウイルスは腫瘍特異的に増殖し、腫瘍を破壊する腫瘍融解性ウイルスであると考えられた。また、新規の腫瘍プロモーターを用いて同様な腫瘍融解性ウイルスの有用をさらに検証するため、細胞周期の特定の時期に発現するサバイビン遺伝子の転写調節領域を検討した。その結果、転写開始点より約500bp5'側上流に当該領域があることをルシフェラーゼアッセイを用いて明らかにし、同プロモーターを用いたウイルスを構築した。
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