研究概要 |
急性冠症候群をはじめとする動脈血栓症の引き金は血小板活性化である。しかし、血小板活性化の分子メカニズムには不明な点が多い。核のない血小板において分子生物学をその研究に応用することが困難であったことが大きく影響していると思われる。その困難を克服するため、細菌毒素streptolysin-Oを用い、形質膜透過型の血小板にし、Ca^<2+>刺激による凝集・顆粒放出解析系を確立した(Methods Enzymol.2005,発表予定)。それらを用い、活性化血小板内で生じる顆粒放出、凝集の分子メカニズムの解明を進めている。2003年には血小板凝集にPKCαが必須であることを直接的に証明した(JBC,2003)。2004年にはインテグリンβ3サブユニットにチロシンリン酸化依存性に結合するアダプター蛋白質ShcAが凝集に必須であることを証明した(BBRC,2004)。低分子量GTP結合蛋白質Rab27の標的蛋白質を血小板細胞質中にMunc13-4を同定し、Rab27-Munc13-4が血小板濃染顆粒放出を制御していることを見出した(JBC,2004)。神経伝達物質放出の必須促進因子として知られるMunc13ファミリーの蛋白がRabの直接制御を受ける初めての例である。Munc13-4の変異で家族性血球貪食症候群が生じるが、本邦の小児科グループとの共同研究でperforinのナンセンス変異より症状が比較的軽いことを見出した(Blood,2005)。
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