研究概要 |
肺線維症の病態における脂質信号伝達物質の役割を明らかにし,関与する物質を分子標的とした新治療法の開発を目的として,以下の解析を行った HVJリポソームによる経気道的合成遺伝子導入実験:研究対象のプロスタグランジン(PG)I2,トロンボキサン(TX)A2の生理活性を局所で利用し,全身性の副作用を抑えるため,これらの合成酵素遺伝子(PGIS,TXAS)の経気道的投与実験をブレオマイシン投与によるマウス肺線維症モデルを用いて行った.投与14日目の肺のヒドロキシプロリン含有量はコントロールに対しPGIS投与で75%(p<0.05)に減少,TXAS投与で105%に増加傾向だった.肺組織への細胞浸潤はPGIS投与で増加,TXAS投与で減少し,モデル動物の生存はPGIS投与で延長,TXAS投与で短縮した. 骨髄移植モデルマウスでの解析:GFPトランスジェニックマウスの骨髄を移植したマウスに,ブレオマイシンを投与して得られた肺組織の免疫組織学的検討を行った.肺胞マクロファージは,ほとんどGFP陽性であった.GFP陽性血管内皮細胞,上皮細胞は,ブレオマイシン傷害肺でみられたが,ブレオマイシン非投与群の肺ではほとんどみられなかった. 吸入治療による肺胞マクロファージへの影響の解析:GM-CSF吸入で改善した肺胞蛋白症患者の治療前後の気管支肺胞洗浄液中の肺胞マクロファージを解析した.表面マーカーであるマンノース受容体・ラテックスビーズの貧食能は,吸入治療後に改善した.経気道的吸入治療が臨床的に肺内のマクロファージに影響することが示された. siRNA発現プラスミド設計:マウスPGIS,TXASに対するsiRNAを設計し,発現ベクターを構築して,C26細胞を用いて,抑制実験を試みたが,プロスタグランジン代謝産物の産生低下はみられなかった.発現プラスミド構築,プラスミド導入方法の再検討が必要と考えられた。
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