研究概要 |
大阪大学遺伝情報実験センター遺伝子機能解析分野で作成されたGFP-transgenic mouseの骨髄を用いたマウス骨髄移植モデルを作成した.このキメラマウスにエラスターゼを投与し,マウス肺気腫モデルを作成した.このマウスに細胞の増殖を促すレチノイン酸を投与し,肺組織を観察したところ,気腫性病変の改善が認められた.このとき,再生された肺胞構成細胞に骨髄由来細胞(GFP陽性細胞)が存在することを認めた.さらに,それらの骨髄由来細胞を上皮細胞のマーカーとしてcytokeratin,内皮細胞のマーカーとしてCD34を用いて多重染色したところ,肺胞上皮および肺毛細血管内皮細胞に分化した骨髄細胞であることを明らかにした.このことは,肺胞再構築に骨髄由来細胞が関与していることを示している.さらに,このマウス肺気腫モデルに,骨髄を刺激するgranulocyte colony stimulating factor (G-CSF)を投与することによっても,肺気腫の改善が認められることを明らかにした.先のレチノイン酸とG-CSFを同時投与すると,肺気腫の程度はさらに改善した.また,大坂大学分子組織再生分野中村敏一教授より分与を受けたhepatocyte growth factor (HGF)を用いると,末梢血中への血管内皮前駆細胞の動員を促し,気腫化肺を改善することを明らかにした.今回発見したHGFの新規作用は,「血管分化誘導促進剤」「肺胞分化再生誘導剤」として特許を申請した.以上のことより,肺胞再構築において,骨髄細胞が重要な役割を果たしていることを示唆した.また,今まで,有効な治療法がない肺気腫に,新たな治療の可能性を示せた。
|