研究概要 |
呼気凝集液は非侵襲的に得られる臨床検体であり、近年喘息・COPDなど多くの呼吸器疾患において研究および臨床上の有用性が検討されつつある。本研究では呼気凝集液の肺癌患者の診療における有用性を検討することを目的として、呼気凝集液中の腫瘍マーカー、サイトカイン、Prostanoidsの測定を試みた。 また、呼気凝集液をベッドサイドにおいても採取できるように採集器を開発した。それを用いて、23例の肺癌担癌患者より採取した。また健常ボランティア10名からも同様に採取して対照とした。腫瘍マーカーとしてはCEA, SLX, CA19-9, CYFRA, ProGRP, NSEを血清中の値が上昇している患者よりの検体で検出を試みたが検出できなかった。サイトカインとしては炎症・線維化に関与すると考えられるIL-1β, IL-6, IL-8, TGFβを測定したが、同様に測定できなかった。ProstanoidsとしてはPGE_2, LTB_4の測定を試み、一部の症例で測定可能であったが、測定値は測定限度下限程度であり、臨床上の所見との比較が行える程度ではなかった。 以上から呼気凝集液中の高分子量の腫瘍マーカー物質・サイトカインなどの測定は通常の方法では難しいと考えられた。より低分子量のProstanoidsに関してはより高感度な検出法をもちたり、検体を濃縮することにより測定ができる可能性が考えられる。今後は低分子量物質を中心に臨床検体として同様に非侵襲的に得られる誘発喀痰などとの臨床症状の有用性に関する比較が必要であると考えられた。
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