研究概要 |
喫煙を開始して1ヶ月以内の経過で急性呼吸不全を呈した急性好酸球性肺炎を喫煙関連好酸球性肺炎(smoking-associated acute eosinophilic pneumonia : CS-AEP)として、その発症機序、病態生理について解析を行なった。CS-AEPの患者10名に対して急性期に気管支肺胞洗浄液(BALF)中のCCR4リガンド{macrophage-derived chemokine (MDC/CCL22),thymus- and activation-regulated chemokine (TARC/CCL17)},およびGM-CSF,IL-4,IL-5,IL-13についてELISA法にて測定した。その結果、CS-AEP患者のBALF中MDC値(median,1518pg/ml, range 0 to 15955pg/ml)は健常者(HV) (median, 84pg/ml, range, 0 to 186pg/ml)と比較して有意に高値であった(p<0.005)。CS-AEP患者に関して、BALF中MDC値とIL-4,IL-5,IL-13との相関を検討すると、いずれにおいても正の相関を示した。またTARC,GM-CSF,IL-4,IL-5,IL-13もCS-AEP患者のBALF中に増加しており、TARCとIL-4,IL-13は正の相関を示した。次に、TARC、MDCの産生細胞を検討するために、スライドに固定したBAL細胞について、抗TARC、抗MDC抗体を用いた免疫染色を行った。さらにCD68をマクロファージのマーカー、CD1を樹状細胞のマーカーとして二重染色を行った。その結果、健常者、CS-AEP患者ともに、CD68陽性の肺胞マクロファージにMDCの発現を認めた。一方、TARCに関してはCS-AEP患者で少数(約5%)の陽性細胞を認めたが、健常者では陽性細胞を認めなかった。二重染色ではTARC陽性細胞はCD1陽性であり、樹状細胞と考えられた。さらに、CS-AEP患者に喫煙誘発試験を行い、その前後でBAL細胞を回収し、TARC,MDの産生について検討した。喫煙チャレンジ前に回収したBAL細胞培養上清中TARCは41pg/mlであったが、喫煙チャレンジの16時間後にBALを行い採取した細胞の培養上清中TARCは915pg/mlと著明に増加していた。また、MDCはチャレンジ前(発症後11日目)においても4424pg/mlと高値であり、チャレンジ後は6432pg/mlと増加は軽度であった。また、BAL細胞からのCCR4リガンドの産生はIL-4の添加で亢進し、IFN-γの添加で抑制された。以上のように、喫煙刺激によるBAL細胞からの著明なCCR4の産生がCS-AEPの発症に関与していることが明らかとなった。
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