研究概要 |
半月体性腎炎および膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、IgA腎症(IgAN)などの進行性糸球体疾患を対象に、上皮細胞・メサンギウム細胞における各種細胞外基質沈着と各種インテグリンの発現ならびに細胞内シグナル伝達系蛋白(focal adhesion kinase(FAK), Src family tyrosine kinase(PTK)およびPI3K/Aktの発現およびこれらシグナル伝達系の更に下流で機能するRaf1,Rac1,RhoAの発現を検討した。 半月体性腎炎においては、細胞性半月体において、fibronectin(FN)の高度の沈着に一致して、alpha3/beta1、および、alphaV/beta3 integrinの発現が見られ、FAK、c-Src、PI3K、Akt、Raf1、Rac1、RhoAの同時発現が観察された。いずれも、半月体が線維細胞性、細胞性となるに従い減弱していた。この結果から、半月体構成細胞はalpha3/beta1、および、alphaV/beta3 integrinを発現しており、FN受容体として機能していること、FNとの結合を介したintegrin/FAK/c-Src/PI3K/Akt経路およびintegrin/FAK/c-Src/PI3K/Rac/Rho経路の活性化が、その生存・増殖に関与している可能性が示唆された。 MPGN、IgANのいずれにおいても、メサンギウムにおけるIV型collagen(CL(IV))とFN沈着増強に伴い、alpha1/beta1,alpha3/beta1 integrinの発現増強が見られ、相互作用の存在が示唆されたが、シグナル伝達系蛋白はFAK,AKT-1,Rho-Aのわずかな増強が認められるのみで、その他、integrin発現増強が細胞内シグナル伝達系に影響を示す所見は見られなかった。MPGNでは、GBMにおけるCL(IV),FNの沈着増強に伴い、alpha1/beta1, alpha3/beta1の各integrin発現増強と、GBMのFAKならびに足細胞のFAK,PI3Kの高度発現が認められ、MPGNにおいてはむしろ足細胞において細胞内シグナル伝達系が大きく変化している可能性が示唆された。
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