研究概要 |
<単球-マクロファージ機能の分化・発現と細胞浸潤> 好中球は,体内に侵入してきた細菌などと反応し,これを除去している。近年,ケモタキシスの運動指向性にPI3KγやRhoファミリー蛋白質が重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。これらはフィードバック機構で結びつくことによって,細胞外から受けたシグナルを増強し,ケモタキシスの制御を行っている。これらの制御には局所でのスーパーオキサイド産生量とともにそれより派生する様々なニトロソラジカルの生成が関与しているものと想像される。これらの活性酸素産生系-消去系のバランスにEC-SODの産生が深く関わっていることが示唆された。 <細胞外フリーラジカルの産生源としての浸潤細胞の重要性> 活性酸素種は白血球,血管壁細胞,心筋細胞などにおいて産生される.生理的レベルの細胞内活性酸素種は細胞内情報伝達を調節し,細胞機能制御に重要な役割を果たす。臨床的にはスタチンはコレステロール生合成経路の律速段階であるHMG-CoA還元酵素を阻害する高コレステロール血症治療薬である。スタチンはNAD(P)H oxidase活性を抑制することにより活性酸素種の産生を減少させ,カタラーゼを中心とする抗酸化酵素の産生を促進すると同時に,NOの生物学的活性を増加させることにより抗酸化作用を発揮し,活性酸素種による細胞膜障害の軽減に貢献すると考えられる。本研究でも腎糸球体細胞膜脂質の防御機能の増強作用として、スタチンの抗酸化作用が明らかとなった。このことから、一般的な腎炎の進行、腎不全の進展の病態制御にスタチンの様な細胞分化促進剤が有効である可能性が示唆された。 <フリーラジカル産生源としてのミトコンドリアの重要性> ミトコンドリアは,大量の酸素からエネルギーを産生する場であると同時に,その過程においてスーパーオキシドを産生する細胞内小器官である。Superoxide Dismutaseがミトコンドリア産生スーパーオキサイドの生成制御に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。従来は細胞質NADPHオキシダーゼ系の重要性が強調されてきたが、ミトコンドリア由来のラジカル生成系についての病態への関与を検討する必要があると思われた。
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