研究課題
基盤研究(C)
進行性の神経変性疾患であるマシャド・ジョセブ病はその原因遺伝子が同定されているが、有効な治療法は確立していない。本症に対する治療戦略として様々な可能性が考えられるが、本研究では、本症がCAGリピートの異常伸長に対応して翻訳産物(ataxin-3)中のポリグルタミンが異常伸長し、この異常ataxin-3の新たな有害な性質、即ちgain-of-function機序により神経細胞死が招来されることに着目した。即ち、異常遺伝子の発現抑制が可能であれば、有効な治療となりえ、異常遺伝子発現抑制は治療法開発の標的のひとつと考えられ、siRNAの治療応用への可能性を検討することを目的としている。マシャド・ジョセフ病と同様にポリグルタミン病に属し、病因(原因遺伝子異常・突然変異)、病態機序に多くの共通点を有するハンチントン病について、CAGリピートを含むエクソン1からなるミニ遺伝子を用いた、培養細胞系について特異的なsiRNAにてハンチンチン遺伝子発現を特異的に抑制できることを示した(Proc Japan Acd 79(Ser B):293-298,2003)。また、CAGリピートのみを標的配列とするsiRNAでは、非特異的な遺伝子発現抑制が起こることが明らかとなった。マシャド・ジョセブ病遺伝子MJDは、日本人では、遺伝子内の一塩基置換多型(SNP)によって、c527T-c669A-c987C-c1118Aとc527C-c669G-c987G-c1118Cの2つのハプロタイプがほとんどで、CAGリピートの異常伸長した疾患染色体は、前者のハプロタイプを有する。前者のハプロタイプ特異的に遺伝子発現を抑制できれば、比較的特異的に変異対立遺伝子(アレル)を抑制できる。他の2研究グループからc987C/Gを標的とするハプロタイプ特異的なsiRNAによる遺伝子発現抑制が報告(Proc Natl Acd Sci USA 100:7195-7200,2003;Ann Neurol 56:124-129,2004)され、後塵を拝した。
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