研究課題
基盤研究(C)
本研究では、ミクログリアの機能を探り、その調節機構を制御することにより中枢神経系の病態の解明と治療法の開発をめざすことを目的として以下の研究を行い、新知見を得た。ミクログリアは抗原提示細胞として、炎症細胞として多発性硬化症(MS)をはじめとする自己免疫性炎症疾患の発症に重要な役割を担う。今回われわれは、ミクログリアがヘルパーT細胞の分化を調節するIL-12ファミリーサイトカインをすべて産生すること(Suzumuraら2003、Sonobeら2005、一部のサブポピュレーションはこれらを産生しないことを突き止めた。また、MSの唯一の治療薬であるインターフェロンβはミクログリアの抗原提示作用は抑制するものの、炎症作用を増強しこれが初期増悪や発熱、倦怠感などの副作用発現と関連している可能性も示した(Kawanokuchiら2004)。さらに、それらの副作用軽減にフォスフォジエステラーゼ阻害薬(PDEI)が有効であること、PDEI単独でもMSの治療になりうることも明らかにした(Kawanokuchiら2004、Fengら2004)。PDEI同様にPituitary Adenylate Cyclase Activating Polypeptide(PACAP)やラジカルスカベンジャーもミクログリアの炎症作用を抑制し、自己免疫性脱髄を抑制した(Katoら2004、Bannoら2005)。ミクログリアは神経変性のエフェクターとしても注目されている。今回、ミクログリアが興奮性アミノ酸であるグルタミン酸産生を介して、神経変性を引き起こすこと、これはアポトージスではなくネクロージスであること、変性に先駆けて、グルタミン酸による神経細胞のミトコンドリアのエネルギー産生が落ち、前向き、ついで後ろ向きの軸索流が障害され、細胞骨格が破壊され、ついには死に至ることを突き止めた。したがって、ミクログリア由来の興奮性アミノ酸の産生抑制が神経変性のひとつの治療手段になりうる可能性があり、今後研究を続ける予定である。
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