研究課題
基盤研究(C)
我々は、骨格筋での遺伝子導入効率の向上をめざしヘルパーウイルス依存型アデノウイルスベクター(HDAd)の作製を行ってきた。今回、dystrophinおよびLacZ発現カセットをもつHDAdLacZ-dysと、dystrophinとCAR発現カセットをもつHDAdCAR-dysの2種類のHDAdを作製した。これらのHDAdを用いてmdxマウスの骨格筋にdystrophinを導入し、その導入効率や発現期間、筋病理変化などについて検討した。HDAdLacZ-dysを幼弱期に注入すると、dystrophinが正常筋と同様に筋線維膜に一致して高率に発現しており、その発現が持続することによって筋病理所見が改善することを確認した。さらに、HDAdCAR-dysを成熟期に繰り返し注入した筋で、一回注入した筋に比べて、dystrophin陽性の筋線維数が9倍増加し、24週齢時点で骨格筋全体の19%の筋線維にdystrophinの発現が認められた。また、それに伴いdystrophin結合蛋白の発現も回復した。HDAdLacZ-dysを繰り返し注入した筋ではこのような増加はみられず、HDAdCAR-dysとHDAdLacZ-dysが注入された筋で惹起された細胞性免疫に明らかな違いは認められなかった。HDAdCAR-dysを成熟mdxマウス骨格筋に注入することによって、繰り返し注入時のdystrophin遺伝子の導入効率が改善したものと考えられた。以上の結果は、Duchenne型筋ジストロフィーに対する新しい遺伝子治療法を提示しており、他の遺伝性筋疾患に対する遺伝子治療にも応用できる可能性があると考えられた。
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