研究概要 |
眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発型失調症(early-onset ataxia with ocular motor apraxia and hypoalbuminemia : EAOH)の原因蛋白aprataxinと相互作用する蛋白質の検索を行い,遺伝子変異によるaprataxin蛋白の局在の変化を観察した. 胎児脳cDNAライブラリーより,Bacterial Two-Hybrid systemを用いてshort-form aprataxinと相互作用する蛋白の単離を試みた.その結果,2つの蛋白が単離された.1つは,Collapsin response mediated protein-2(CRMP-2)で,神経細胞の軸索形成に重要な役割を担う可能性がある.もう一つは,FLJ31106というクローンで,CD34陽性血液幹・前駆細胞に発現しているHSPC166にホモロジーのある蛋白である.今後免疫沈降法を用いて相互作用を確認する. 変異蛋白を培養細胞に発現させ,その発現パターンの変化を共焦点レーザー顕微鏡で観察したGFP, Mycとshort-form aprataxinの融合蛋白をCOS7細胞に発現させたところ,野生型は細胞質に多く局在し,167番塩基のT挿入変異と,80番目の塩基のAからGへの,また95番目の塩基のCからTへのミスセンス変異のある蛋白は,核に多く局在した.また変異蛋白を発現させた細胞質には,信号強度の高い点状の発現がよく見られた.T挿入変異では,フレームシフトを起こし正常より短い蛋白が作られ,また,2種類のミスセンス変異は,ヒスチジンtriadスーパーファミリーの保存されたアミノ酸残基に位置しているため蛋白の機能異常を来たし細胞内局在が変化すると考えられた.また,野生型と変異short-form aprataxinでは局在が異なっており,細胞内局在の変化がEAOHの病態に与していることが示唆された.また,long-form aprataxinでは,野生型と80番目のAからGへの変異型の両者とも核に局在し,細胞内局在の変化はなかった.今後他の変異long-form aprataxinにても細胞内局在を検討する.
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