研究課題
基盤研究(C)
糖尿病性血管合併症の発症進展因子の1つである最終糖化産物に対する生体反応の個人差が合併症進展の個人差に関与する可能性について検討した。糖尿病患者および健常人から同意を得た上で採取さいた初代培養ヒトマクロファージに3種類の最終糖化産物を添加してサイトカイン産生(TGFβ、IL1)を測定した結果、サイトカイン産生に約4倍の個人差が認められた。サイトカイン産生は糖尿病性網膜症、腎症罹患患者において、合併症のない糖尿病患者に比較して2.5倍と有意に高かった(n=25)。従って、同じ量の最終糖化産物が体内に蓄積した際に、最終糖化産物に対するサイトカイン産生の差が最小血管合併症進展の差となる可能性が示唆された。一方で大血管合併症の程度とサイトカイン産生量には相関がなく、これは大血管合併症の進展因子として脂質代謝因子が強く関与していることが考えられた。TGFβ産生量とマクロファージスカベンジャー受容体の289位遺伝子多型に相関が認められ、受容体と最終糖化産物の親和性の差がTGFβ産生に関与する可能性を考えて、結合実験を行ったが有意な差は認めなかった。また最終糖化産物添加によりマクロファージにおいてアポトーシス関連遺伝子が有意に増加し、抗アポトーシスに働き、かつサイトカイン産生量が多いマクロファージほど抗アポトーシス作用を強くもつことが判明した。以上の結果から最終糖化産物に対するマクロファージの反応はサイトカイン産生、抗アポトーシス作用において個体差が存在し、最小血管合併症の進展と関連することが示唆された。
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