研究課題
基盤研究(C)
我々は以前、IL-6がヒト単球のdermal型樹状細胞への分化を抑制することを報告した。本研究では、多発性骨髄腫の免疫不全の克服を目的として、Notchシグナルの抗IL-6作用の検討を試みた。本研究の遂行過程において、Notchシグナルがヒト単球のLangerhans細胞への分化に密接に関わることを発見した。NotchリガンドDelta-1が表皮のケラチノサイトの一部に発現されているという最近の報告に鑑み、ヒト末梢血単球がLangerhans細胞の前駆細胞であり、皮膚環境においてLangerhans細胞に分化するという仮説を立て研究を推進した。皮膚の構成細胞は、GM-CSFとTGF-β1も産生するため、末梢血単球をNotchリガンドDelta-1、GM-CSF、TGF-β1の存在下で培養した。Notchシグナルを効率的に伝達させるために、Detla-1は固相化して用いた。7日間培養された細胞はCD1a、CLA、CCR6、Langerin、E-Cadherinを発現していた。電子顕微鏡学的形態において、培養細胞は多数の細長い細胞突起を有し、細胞質内にはBirbeck顆粒を有していた。これらの細胞は貪食能を示した。培養後期にTNF-αとCD40リガンドを添加すると、CD80、CD86、HLA-ABC、HLA-DRの発現は亢進し、典型的な成熟Langerhans細胞の表現型を示した。成熟Langerhans細胞は、MHCクラスI拘束性の抗原ペプチドに特異的なCD8陽性細胞を活性化した。また、Th1タイプのCD4陽性細胞を誘導した。このような表現型および機能を示すヒトLangerhans細胞の培養系での生成はこれまで報告されていない。以上の研究成果は難治性造血器腫瘍である多発性骨髄腫などの免疫細胞療法の開発に発展的に寄与するものと思われる。
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