研究課題
基盤研究(C)
GVHD予防のための選択的抗原提示細胞標的療法の実現に向けて、まず標的とすべき細胞群の同定を行う必要があり、われわれの開発したマウスモデルの系を用いて実験を行った。その結果、レシピエント由来樹状細胞(DC)単独でGVHDを発症可能であることが示された。一方、ドナー由来DC、レシピエント由来B細胞単独ではGVHDは発症しなかった。これによりレシピエントDCがGVHD予防のための標的細胞であることが判明した。次に、免疫偏向と活性化T細胞アポトーシスなどの免疫学的機序を利用してin vivoでGVHDの制御が実現可能かどうか、マウス骨髄移植(BMT)モデルを用いて検討した。まず、合成NKTリガンドである、α-galactosylceramide(α-GarCer)を放射線照射後のレシピエントに投与し、そのIL-4産生能が保たれていることを確認した。次いで、BMTを実施し、直後にα-GarCer(100μg/kg)をレシピエントに投与した。移植後早期にレシピエントのリンパ節から分離したドナーT細胞のアロ抗原に対する反応は、NKTリガンド非投与群ではTh1応答性を示したのに対し、投与群ではTh2応答性を示した。これを反映し、投与群では非投与群に比し、血清中IFN-γとTNF-αの減少を認めた。これらの結果、NKTリガンド投与群において急性GVHDは抑制され、GVHD死亡率の劇的な改善がみられた。一方、レシピエントにNKT細胞の欠損したCD1d-/-マウスあるいはIL-4-/-マウスを使用した場合にはこの効果は見られず、レシピエントのNKT細胞のIL-4産生を介した反応であることが示唆された。また、STAT6^<-/->マウスをドナーにした場合にもNKTリガンド投与の効果はみられず、ドナーT細胞のTh2シフトがこのGVHD抑制効果に関与していることが示された。これらの結果から、新たなGVHD抑制法の臨床応用への可能性が示された。
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