研究概要 |
白血病、悪性リンパ腫におけるNM23遺伝子の過剰発現や、細胞外に分泌されたNM23蛋白質に着目して、血液を用いた予後診断法を開発した。血清「NM23蛋白質が予後不良因子となる生物学的基盤を解明するために、細胞外環境におけるNM23蛋白質の細胞生物学的機能を検索し、そのサイトカイン様の機能を明らかにした。 1)血清NM23蛋白質の正常末梢血単核細胞に対する作用 予後不良の白血病に検出される血清NM23濃度において、NM23蛋白質は正常末梢血単核細胞(特に単球)の生存を阻害した。血清NM23が予後不良因子となる生物学的基盤としてこの機能に注目した。NM23蛋白質を処理した正常末梢血単核細胞に誘導される遺伝子/蛋白質の発現をcDNA microarray、RT-PCR、Protein array、ELISAを用いて包括的に解析した。サイトカイン、ケモカイン,ICAM-1,MMP12,MMP7等、腫瘍の悪性化に関与する多くのサイトカインが誘導されることが判明した。誘導されたサイトカインは初代培養の白血病細胞の増殖・生存を直接促進した。NM23は単球を活性化し、サイトカイン産生を介して間接的に腫瘍細胞の増殖を支持することができると推察される。 2)血清NM23蛋白質の初代培養白血病細胸に対する作用 NM23蛋白質は初代培養の白血病細胞の増殖・生存を直接促進した。この作用はサイトカインの誘導およびMAPKおよびSTAT系シグナル伝達の活性化が関与していた。白血病細胞が分泌したNM23分子をメディエーターとしてオートクラインに、また単球を介してパラクラインに自身の増殖を促進すると考えられた。これは細胞外環境におけるNM23蛋白質の新しい機能であり、血清NM23蛋白質が予後不良因子となる生物学的機能基盤の1つと考えられる。さらに、治療の新しい標的としても今後の展開が期待できる。
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