研究概要 |
未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)は独特な組織形態と、t(2;5)の染色体異常を特徴とする非ホジキンリンパ腫の一亜型である。t(2;5)の結果、2p23に存在するALK遺伝子と5q35に存在するNPM遺伝子が相互転座してキメラタンパクを生ずる。MPM-ALK転座例はALKに対する免疫染色が陽性となるが、ALK陽性ALCLの約70%を占める。残りの30%のALKが別の遺伝子と転座していると考えられるが、前者NPMはALK例ではALKの染色が核+細胞質陽性となるのに対し、後者では細胞質のみが陽性となる。MPM-ALK転座に関しては、近年リンパ腫発症のモデルとして比較的良く解析されてきているが、亜型に関しては散発的な報告のみで、詳細は明らかでなかった。本研究では、まずALK転座亜型を有する細胞株があるかどうかを探索した。ALCLとして過去に樹立された細胞株および、その他のT細胞性リンパ腫細胞株15株に対し、ALKの膜貫通部位を対象としてRT-PCRを行ったところ、既にNPM-ALKが存在することが判明しているSUDHL-1,Karpas299の他に、AST-1,DL-40,DL-110の3株で陽性バンドを認めた。これら3株はいずれもNPM-ALKをはじめ既報のALK転座のRT-PCRは陰性であった。ALKの免疫染色、Western blottingもいずれも陰性で、Northern blottingでは、極めて低用量のALKの発現を認めた。正常ALKは造血器細胞での発現はないとされてきたが、転座がなくても極めて低用量の発現がある細胞株が存在することが明らかとなった。次に、臨床検体でALK亜型転座の解析を行った。ALK陽性例でNPM以外の転座相手を同定できたものは6例あり、ATIC 3例、TPM3 2例、TFG 1例であった。1例に関しては転座相手を同定できなかった。前記のうち2例はALK核陽性例であった。これまで、核陽性例の転座相手はNPMに限られるとされてきたが、必ずしもそうではないことが明らかとなった。亜型転座の相手に関しても、欧米ではTPM3が多いとされてきたが、本邦ではATICが多いとの違いが明らかとなった。
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