研究概要 |
母斑性基底細胞癌症候群の日本人患者8名のPTCH遺伝子解析を新しくPCR direct sequence法にて解析し6名で遺伝子変異を同定した(Fujii K et al., Hum Mutat 2003)。これらは従来より高率に遺伝子変異を同定することができ、新しい変異解析方法の開発ないし人種の違いによるものと考えられた。また母斑性基底細胞癌症候群患者で腫瘍形成性のある潰瘍性大腸炎を合併した症例についてPTCH遺伝子変異を同定し報告した(Fujii K et al., Am J Med Genet 2003)。またPTCH遺伝子のプロモーター領域に3塩基配列のポリモルフィズムが存在しPTCHタンパク機能に影響を持つことを見出し報告した(Nagao K, Fujii K et al., J Hum Genet 2004)。この他PTCHタンパクに3種類のisoformが存在することも見出し報告している(Nagao K, Fujii K et al., Genomics 2005)。このように原因遺伝子であるPTCHの変異および機能解析を進め上記の研究成果を上げることができた。 一方、放射線照射後の細胞応答能についての解析も行った。放射線照射後のPTCHタンパクの細胞内分布について共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析し、PTCHタンパクが放射線照射前後で細胞質内に分布している成果を得た。放射線照射後のMAP kinase cascadeの亢進させるWestern blotの結果を得て、現在阻害剤cyclopamineによるシグナル伝達抑制を試みている。またPTCHタンパクを強制発現すると細胞がアポトーシスを来たして細胞死が誘導されることが知られている。2量体形成性タンパクである14-3-3 proteinの拮抗薬は腫瘍を縮小させる効果が報告されておりその臨床応用が米国を中心に行われているため、本タンパクが疾患で果たす役割についても検討し学会で報告した。
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