研究概要 |
神経芽腫においてp53は通常核内に存在し、抗がん剤でありDNA損傷をもたらすDoxorubicinによってp53は誘導され、核内に蓄積した。このDoxorubicin刺激によってp53はそのセリンがリン酸化された(Serine15,20,46を抗リン酸化ペプチド抗体で検索した)。しかしながらDoxorubicinに対して耐性の神経芽腫株では、Doxorubicin投与によってp53がリン酸化を受け核内に蓄積しても、p53依存性に転写が促進することが知られているp21Cip1/Waf1,MDM2,Bax, Puma, Noxaは増加しなかった。Doxorubicin感受性株ではpro-apoptotic Bcl-2 familyのうちNoxaのみがtotalcell lysateで蛋白量が増加していた。しかしながら無刺激の時点で相当量のNoxaが非感受性株でも認められることから、ミトコンドリアにおけるNoxa発現量を解析する必要があると判断し、細胞分画法でミトコンドリアにおけるBcl-2 family蛋白の発現解析を行った。その結果Doxorubicin感受性株ではミトコンドリアにおいてDoxo刺激によるNoxaの蓄積が明確に認められ、Bcl-2の発現量との比率も増加していた。 Doxorubicin感受性株での細胞死に伴い、ミトコンドリアからのチトクロームCの放出、ミトコンドリア膜電位の変動、カスペース9/3/7の活性化が認められることから細胞死の原因はミトコンドリア依存性アポトーシスであることが明らかにされた。これはDoxorubicin感受性株でNoxaがミトコンドリアで増加することが原因と考えられる。 進行期神経芽腫は化学療法に対して治療初期の反応は良好であるが、再発率が高く、再発後にはp53の変異率が増加して化学療法に対して不応になっていく。今回の研究からP53が野生型を維持している期間に、p53の転写活性を正常に維持すれば治療成績の改善が見込める可能性が示唆された。 今後の研究課題として神経芽腫のDoxorubicin耐性株におけるp53の転写活性抑制機構を検討することが必要と思われた。
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