研究課題
基盤研究(C)
若年性骨髄単球性白血病(JMML)におけるp15のエピジェネテイックコードによる遺伝子発現の制御機構を検討した。GM-CSFとSCF刺激により産生されたDay7の骨髄系細胞は、正常対照においては40%-70%の頻度で全例にp15遺伝子のメチル化がみられたが、JMML患者の骨髄CD34陽性細胞から産生されたDay7細胞のp15遺伝子は6例中、すべての例でほぼすべてのCpG部位が非メチル化状態を示した。p15 mRNAの発現をreal-time PCR法を用いて検討したところ、JMML患者において有意に高い発現が認められた。培養7日目の細胞内のDNAメチル化酵素(DNMT1、DNMT3a、DNMT3b)の発現量についても、real-time PCR法を用いて定量した。DNMT1とDNMT3aの発現はJMML患者において有意に高かった。DNMT3bは正常対照ではほとんど発現は認められず、JMML例でもわずかな発現にとどまった。正常対照の培養7日目の細胞においてヒストンH3とヒストンH4のアセチル化とともに、9番目のリジンのメチル化を有するヒストンH3が検出された。一方、JMMLでもヒストンH3とヒストンH4はアセチル化していたが、9番目のリジンのメチル化を有するヒストンH3は検出されなかった。このことは、JMMLではp15遺伝子の転写が活性化状態にあることを裏付けていた。これらのことから、JMMLにおけるエピジェネテイックコードによる遺伝子発現の制御異常が示唆された。また、本症における診断基準の1つとなっているGM-CSF hypersensitivityはウイルス感染でも認められるとの報告があるが、メチル化の有無を同時に解析することはより正確な診断を下す上で有用であると思われた。
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