研究概要 |
本研究では、ヒトおよびマウスのGMFGのgenomic DNAの解析を進めた。また、GMFB、GMFGに対する特異的抗体を用いて酵素抗体法による高感度測定法(EIA)を確立した。また、凍結によって作成した脳損傷モデルラットを用いて、損傷後の脳組織におけるGMFBの発現変化を検討した。 [1]GMFG genomic DNAの解析:ヒト及びマウスGMFGのgenomic DNAをクローニングし、塩基配列を決定した。その結果、ヒトおよびマウスともGMFGは7つのexonより構成されることが判明した。Promoter部位はTATA lessで、housekeeping gene様のGC rich promoterであり、転写開始点が数カ所あることが判明した。また、エンハンサー領域の解析を行った(Kawai et al. BBA,1625,246-252,2003)。 [2]Enzyme Immunoaasay(EIA)系によるGMFsの定量:EIA系を用いて、ラットおよびヒトの各種臓器中のGMFB、GMFGの濃度を測定した。GMFBは、中枢神経でもっとも発現が高く、それ以外に、脾臓、胸腺、肺、腸管にも分布していた。一方、GMFGは、胸腺での発現が圧倒的に高く、ついで、脾臓に発現が高かった。また、ラットおよびヒト血清中濃度を測定したところ、GMFBは年齢、性別による変化は無かったが、GMFGは、年齢とともに低下傾向であった(Inagaki et al. BBA 1670,208-216,2004)。 [3]ラット脳凍結損傷モデルにおけるGMFBの発現変化:Wistar系ラットの大脳皮質に凍結損傷を作成し、損傷後のGMFBの発現変化を検討した。その結果、GMFBは、損傷周囲の反応性アストロサイトに強く発現していた。mRNAおよびタンパク発現は、損傷後上昇し、14日をピークに以降減少した。これらの結果から、脳損傷後の修復過程においてGMFBが何らかの役割を担っていることが考えられた(Hotta et al. Mol.Brain Res.,133,71-77,2005)。
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