研究課題
基盤研究(C)
小児悪性リンパ腫では、バーキットリンパ腫やリンパ芽球性リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、びまん性B細胞性リンパ腫が全体の90%以上を占め、その大半は悪性度と増殖活性が高く、節外性に発症する症例が多い。小児悪性リンパ腫に対する治療については近年、腫瘍細胞の表面形質や増殖活性などの生物学的特性に合わせた、急性白血病と同様の多剤併用療法が試みられ、無病生存率は80%を上まわるに至ったが、化学療法に対して抵抗性を認める症例も少なからず存在する。これらの寛解導入不能例の原因は、腫瘍細胞におけるアポトーシス応答性の異常によると考えられている。アポトーシスの分子シグナルにはFas/Fas ligand(CD95/CD95 ligand)を介する経路とp53を介する経路が知られているが、最近、悪性度の高いバーキットリンパ腫などでCD95発現が消失し、節外性悪性リンパ腫の90%以上でCD95の遺伝子変異が認められることが報告され、悪性リンパ腫における化学療法抵抗性獲得の分子機序の一つとして、Fas/Fas ligandを介するシグナル経路の異常が関与している可能性が示唆された。病理組織学的・分子生物学的解析、ならびに予後や生存率などの臨床情報と関連づけた多角的解析が可能な50例の症例を集積した。その内訳は寛解導入症例37例、寛解導入不能症例8例、予後未決定症例5例である。CD95発現およびp53過剰発現についてみると、小児悪性リンパ腫ではそれぞれ46%、62%であった。しかしながら、CD95発現およびp53過剰発現と組織型および表現型との関連は明らかでなく、また、寛解導入例、非導入例との間にも相関関係は認められなかった。
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