研究概要 |
近赤外光を用いた脳機能モニターは、ベッドサイドで患児を拘束せずに測定できる利点がある。ヒトの大脳皮質でモニターされるヘモグロビンの自然な低周期性変動が脳機能の活性化の評価に及ぼす影響や新生児期の脳障害の病態をモニターすることを目的とし、多チャンネルの近赤外分光装置を使用し、脳障害のない新生児を対象に脳内ヘモグロビン濃度の自然な変動を自然睡眠時に測定し、変動周期を検討した。 (対象及び方法)正期産児10例(在胎週数37〜40週、出生体重2358〜3400g、測定日齢2〜12)と早産児11例(在胎週数23〜34週、出生体重474〜2048g、測定日齢36〜163)。光トポグラフィーを使用し、両側の側頭部に12chの4×4cmのプローブ(投光受光部間距離20mm)を装着し、自然静睡眠時に0.1秒毎に10分間連続測定した。酸素化ヘモグロビン(oxyHb)と脱酸素化ヘモグロビン(deoxyHb)の周期的変動について,24chの180秒間のデータをパワースペクトル(PSD)解析し,早産児と正期産児を比較検討した。 (結果及び考察)周波数帯を0.02〜0.06,0.06〜0.10,0.10〜0.15Hzに区分し正期産児と早産児を比較した結果,oxyHbのPSDは、周波数帯0.02〜0.06では正期産児が81±4(SD)%,早産児が69±15%で正期産児が有意に高値を示した。0.06〜0.10では正期産児が16±4%,早産児が28±14%で早産児が有意に高値を示したdeoxyHbのPSDについても、0.02〜0.06で正期産児が、0.06〜0.10で早産児が各々有意に高値を示した。以上より正期産児において低周波数帯の成分が多いことが見出された。この現象については不明であるが,出生後の脳発達の差異を示しているかもしれない。
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