研究概要 |
約5000個のヒト完全長cDNA配列(東大医科研が公開)と、ヒトゲノム配列と逐次比較し、約2800個の遺伝子について、転写開始点から10kb上流までの配列をデータベース化した。同様にマウス完全長cDNA配列(理化学研究所が公開)とマウスゲノム配列を逐次比較し、転写開始点から10kb上流までの配列をデータベース化した。これらのデータベースを用いて、転写開始点から10kb上流までの配列におけるダイオキシン反応性モチーフ(塩基配列GCGTG : Dioxin responsive element以下DRE)の分布を、定量化し、DREが転写開始点上流近傍に多く存在することを示した。DREの分布と遺伝子発現量との間の相関を見るため、まずマイクロアレー(Affymetrix社)を用いた解析により、ダイオキシン曝露の有無によるマウス胎児前脳の遺伝子発現量の差について検討した。同じcDNAサンプルを用いて2度のマイクロアレー解析を行い、ダイオキシン曝露群の遺伝子発現量が2度とも2倍以上に増加した遺伝子は6個(Cyp1a1,Rgs5,Atm,Cyp1b1,Cyp1a1,Nnt,Archain1)、2度とも0.5倍以下に減少した遺伝子は6個(Nfia,Xlr3b,Mab2112,Gbe1,Hemgn,Mid1)存在した。遺伝子発現変化の再現性をReal-time PCR法により確認した。既にダイオキシンにより遺伝子が誘導される事が示されている本実験ではCyp1a1やCyp1b1の遺伝子発現が増加したことから、充分量のAHRRが胎児全脳に到達したと考えられる。発達遅滞をきたすヒトの先天異常症候群の原因遺伝子であるMid1が減少したことはダイオキシン曝露と中枢神経異常の関連を考える上で注目に値するデータである。
|