研究概要 |
生理的曝露量を大幅に超えたVII型コラーゲン大量曝露を行うため,大量にリコンビナントVII型コラーゲンを作成した。pDON-A1 vectorにVII型コラーゲン遺伝子COL7A1cDNA全長を導入したコンストラクトを一般的に使用されるヒト有棘細胞由来のHaCaT細胞に導入すると,少量の系では,リコンビナントVII型コラーゲンが得られるが,徐々にVII型コラーゲン産生能が低下するため,大量の系には適さないことを新たに見いだした。 この結果を受けて,同様のコンストラクトをヒト胎児腎臓由来293細胞に導入し,大量培養行った。その結果この系は,培養上清1リットルに付,10μgのリコンビナントVII型コラーゲンを得られることが判明した。 得られたリコンビナントVII型コラーゲンを抗ヒトVII型コラーゲン抗体LH7.2を結合させたアフィニティークロマトグラフィーにて精製したところ,リコンビナントVII型コラーゲンを精製することが出来た。精製状況は,SDS-PAGEのCoomassie染色とウエスタンブロットで290kDに1本のバンドが得られることで確認した。 この精製VII型コラーゲンを培養細胞に添加して,増殖状態を観察した。VII型コラーゲンを添加したHaCaT細胞,正常ヒト培養表皮角化細胞のいずれにおいても96穴プレートに10μlの添加では,差は見られなかった。100μlの添加でも無制限な細胞増殖がおこるわけではなく,むしろ僅かながらではあるが,細胞増殖の抑制を示唆した。この実験結果から,リコンビナントVII型コラーゲンの大量曝露が抑制のかからない自立性の細胞増殖や腫瘍形成と直接結びつく結果は得られなかった。この結果は,INTERNATIONAL INVESTIGATIVE DERMATOLOGY 2003にて報告した。
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