研究概要 |
S100遺伝子の配列、毛周期におけるS100遺伝子の発現変動、神経ペプチドsubslance Pとその前駆体ppt-Aおよびneutral endopeptidaseの毛包・脂腺系における蛋白レベルの局在(S100A3,A6との比較)につき検討した。加えて毛母腫におけるS100Aタンパク質の発現についても検討した。 1.S100遺伝子の配列(マウス):S100A3遺伝子のゲノム上のマッピングを行うため、S100A3遺伝子を含むBACクローンのサザンブロット解析を行った。S100A3,S100A4およびS100A6プローブをハイブリダイズした結果、これら3つの遺伝子が同一BACクローン上に配列していることが判った。これらの結果に基づき、マウス第3染色体のS100遺伝子クラスターの制限酵素マップを得た。 2.毛周期におけるS100遺伝子の発現変動:S100AmRNAに対するアンチセンスRNAプローブを用いて、毛周期におけるmRNA発現レベルにつきノザンブロット解析を行った結果、S100A3の発現は成長期に限局し、S100A4,A6は退行期・休止期・成長期(第1毛周期転換期)にも発現が認められた。 3.毛母腫22例におけるS100A2,A4,A6タンパク質の発現につき免疫組織学的に検討し、本皮膚腫瘍の分化傾向につき、正常毛包における発現と比較した。毛母腫の構成細胞は部分的に異なるS100Aタンパク質の発現を示し、毛包形成に関与する分化能を依然有していることが明らかとなった。 4.ICRマウス皮膚におけるsubstance Pおよびneutral endopeptidaseの免疫染色を行った結果、substance Pは毛包・脂腺系における発現はみられず、周囲結合織の神経線維に陽性を示した。一方neutral endopeptidaseは一部の毛包の外毛根鞘および脂腺辺縁細胞に陽性所見が認められた。S100A3は毛小皮細胞に強く染まり、毛皮質細胞にも弱い発現がみられた。さらにS100A6は主として内毛根鞘に陽性所見を示した。substance P・neutral endopeptidaseとS100A3,A4,A6各々の二重染色では、毛周期のいずれの時期においても両者の局在に同一性は認められなかった。
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