研究概要 |
乾癬の病因解析を進める目的で、乾癬患者集団を用いて、SNP解析を軸として乾癬疾患感受性遺伝子群の解析を推進することにより、この3年間に以下の点を明らかにすることができた。 1)ヒト主要組織適合抗原のひとつであるHLA-Cw6のレセプターになっているKIR (Killer cell immunoglobulin-like receptor)分子の多型性を支配するKIR遺伝子の多型解析から、単一なKIR遺伝子から成る患者群(タイプI)と複数のKIR遺伝子群から成る患者群(タイプII)の2つに大別されることを明らかにした。(J.Invest.Dermatol.,122:1133-1136,2004) 2)乾癬と相関を示すHLA-Cw6の遺伝学的メカニズムを説明する根拠として、HLAクラスI遺伝子を通して疾患感受性を支配するKIR遺伝子の多型性をみていたことが示唆される。 3)乾癬治療薬のひとつであるシクロスポリンに対する治療応答性の面から解析すると、タイプI(活性化KIRとして2DS4のみを有する)の方が、タイプII(活性化KIRを複数個有した群)の乾癬患者群よりPASIスコア減少率でみたとき、治療応答性が良好であることを明らかにした。(皮膚の科学,3(5):518-522,2004) 4)ケラチノサイトの分化・増殖に関与すると推測されているHLA領域内のHCR(α-helix coiled-coil-rod homolog)遺伝子のSNP解析結果から、白人乾癬患者集団で認められる箇所と同一部位での有意(P<0.05)なSNP多型を観察したが、HLA-Cw6との連鎖不平衡に由来するものか、あるいは一義的相関であるのかの結論は得ることができなかった。 (日皮会誌,115(13),1955-1957,2005) その後の研究から、HCR遺伝子は、ある重要な機能を有する受容体遺伝子であることが判明したので、現在、解析を進めているところである。
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