研究概要 |
さまざまな種類の皮膚炎症病態の成立には、レドックスバランス、すなわち、酸化ストレスと抗酸化物・抗酸化酵素のバランスが本質的に重要な役割を果たしていると考えられている。 平成15〜16年度を通して、皮膚炎症におけるレドックスバランスの解明を試みた。具体的には次の2点に絞り研究課題を実施した。 1,中濃度の一酸化窒素(nitric oxide ; NO)による中波長紫外線(UVB)照射後に生ずるケラチノサイトアポトーシスの抑制 本研究では皮膚炎症のなかでも特に、皮膚にUVBを照射した後に生ずるケラチノサイトアポトーシスについて調べた。このアポトーシスには酸化ストレスが関与すると考えられているが、本研究では、レドックスバランス関連分子であるNOのこの反応への影響を調べた。その結果、中濃度NOはUVBによるケラチノサイトアポトーシスを抑制することを見い出した。さらに、NOがアポトーシスシグナル伝達経路のp53,caspase 8,caspase 9およびcaspase 3を抑制すること、NOはBcl-2を活性化することを明らかにした。これらの機序を介して、中濃度NOはUVBによるケラチノサイトアポトーシスを抑制すると考えられる。なぜNOがこのような効果を持つのかについての詳細は不明である。おそらくは、NOがレドックスバランス調節に関与する別の分子と反応するためではないかと考えられる。 2,レドックスバランス解析系としての炎症刺激モデルマウスの作製 皮膚炎症をもたらす刺激のモデルマウスとして、(1)圧迫による虚血モデルマウス、(2)創傷モデルマウス(3)紫外線モデルマウス、(4)擦過刺激モデルマウスを作製した。現在のところ、これらのモデルマウスにおけるレドックスバランス解析による病態解明はまだ始まったばかりである。今後これらを用いてさらに解析を進める予定である。
|