研究概要 |
CD14^+CD16^+単球は抗原提示能を持つproinflammatoryな亜群と考えられており、結核やAIDS、川崎病などの炎症性疾患や感染症で増加することが知られている。サルコイドーシス患者の末梢血を調べると、CD14^+CD16^+単球が血清ACE値と有意な相関をもって増加する。そこで、単球亜群の肉芽腫形成に関わる役割をin vitroにて検討した。患者末梢血から磁気細胞分離システムを用いて全単球を分離後、フローサイトメトリーにてCD16+細胞を回収したが、機能解析に十分な細胞数が得られなかった。そこで、これまで報告されているサイトカイン刺激によるCD14+CD16+の誘導を利用し表面マーカーや機能解析を試みた。通常のプラスチック皿では付着細胞が優位となるため、テフロン加工の培養皿を用いた。既報告のM-CSF/IL-4やTGFβでは若干の誘導しかみられなかった。しかし、M-CSF/TGFβ、あるいはM-CSF/IL-10、M-CSF/TGFβ/IL-10では十分量のCD14+CD16+が誘導された。一方、プロスタグランディンはCD16+の発現を強く抑制し、培養3日目には大部分がCD14++CD16-細胞となった。プロスタグランディンE2受容体はEP1からEP4に分類されるが、それらの抗体を用いて検討すると、EP1、EP3は全く影響せず、EP2の強い関与を認めた。M-CSF/TGFβ/IL-10で誘導されたCD14+CD16+細胞をフローサイトメトリーにて表面マーカーを測定するとGD80+,CD1a-であり、ケモカイン受容体の発現はCXCR3-,GCR4^<weak+>,CCR5++,CCR6^<weak+>であった。また、CD14+CD16+単球の誘導におけるNotchシグナルの関与を知るために、Notchリガンドでコートした培養皿で培養すると、jadded-1、delta-1コート培養皿でCD14+CD16+単球誘導の強い抑制が認められた。M-CSF/IL-10刺激で得られたCD14+CD16+単球を用いて、サルコイドーシスの病変部に証明される菌体成分であるムラミルジペプタイド(MDP)、p.acnes刺激によるサイトカインの産生を調べたところ、IL-1、IL-6の強い産生が認められた。また、同様の刺激は接着分子であるICAM-1の発現を増強させた。しかし、ケモカイン受容体の発現に影響は及ぼさなかった。一方、CD14++CD16-細胞からの類上皮細胞への誘導実験は、テフロン加工培養皿を用いて長期間培養を行ったが、形態学的に変化は認められなかった。また、各種ビタミンD3やフィブロネクチンコート培養皿を用いた実験でも、類上皮細胞様細胞の誘導はできなかった。
|