研究概要 |
平成15年度は,生後発達期のμ3Bノックアウトマウスの海馬CA1における興奮性および抑制性終末の形態学的変化を明らかにする目的で、μ3Bノックアウトマウス(KO)およびwild typeマウス(WT)を用い、生後2,4,6,8,16週齢において、海馬CA1を対象に免疫組織化学的ならびに定量形態的検討を行った。その結果、いずれの週齢でも通常の光顕観察では異常を認めなかった。電顕的に興奮性および抑制性終末の大きさ自体にはKOとWTの間で差は認められなかったが、興奮性終末のシナプス小胞の直径は、4、6、8週齢ではKOの方が小さく、16週齢ではKOの方が大きかった。一方、抑制性終末のシナプス小胞の直径は、いずれの週齢でもKOの方が小さかった。さらに、KOではいずれの週齢でも興奮性および抑制性終末1個あたりのシナプス小胞の数も少なかった。 平成16年度は,生後発達期のμ3Bノックアウトマウスの海馬CA3について平成15年度と同様の検討を行った。その結果、いずれの週齢でも通常の光顕観察では異常を認めなかった。電顕的に興奮性および抑制性終末の大きさ自体にはKOとWTの間で差は認められなかったが、興奮性終末のシナプス小胞の直径の平均値はいずれの週齢でもKOの方が大きく、大小不同が目立った。一方、抑制性終末のシナプス小胞の直径は、6-16週齢でKOの方が小さかった。さらに、KOの興奮性終末ではいずれの週齢でも終末1個あたりのシナプス小胞の数がWTよりも少なかったが、抑制性終末では差が認められなかった。 以上の結果から、本モデルではAP3B機能欠損によって小胞形成に障害が生じ、海馬CA1に加えCA3への興奮性と抑制性入力の不均衡がけいれんを惹起している可能性が示唆された。
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