研究概要 |
周産期に内分泌撹乱物質のBPAに暴露されたラットでは幼若期のけいれん準備性が減弱し,成熟期では亢進していた.また,成熟期のラット扁桃核キンドリング形成およびキンドリング完成後の発作症状に対し,BPAの急性投与はいずれも有意な影響を認めなかった.一方,周産期にEBを投与したラットにおいては,幼若期及び成熟期ともにけいれん準備性が亢進し,また成熟期のラット扁桃核キンドリング形成を促進し,キンドリング完成後の発作症状も悪化した. Open-field testから,周産期にBPAに暴露されたラットでは幼若期および成熟期のいずれも有意な影響が見られなかったが,EBに暴露されたラットでは,成熟期において行動量が低下していた. 周産期内分泌撹乱物質に暴露されたラットの体重は,10日,30日齢では,性別に関係なく,BPA群,EB群ともにコントロール群に比較し,有意に軽かった.しかし,60日齢ではBPA群はコントロール群に比較して有意な差を認めなかったが,EB群はコントロール群に比べ,雌雄両性ともに有意に体重が軽かった.80日齢の雄性ラットはEB群はコントロール群に比べ有意に体重が軽く,一方,雌性ラットはBPA群はコントロール群に比べ有意に体重が軽かった.また,80日齢の雄性ラット睾丸重量は,BPA群はコントロール群との間で有意な差を認めなかったが,EB群は有意に軽く,男性性腺機能にはEBの方が,BPAに比べてより影響を及ぼすことが明らかとなった. 以上の結果から,脳,神経系の発達過程にある周産期に内分泌撹乱物質であるBPAに暴露された場合,幼若期だけでなぐ成熟期におけるけいれん準備性にも影響を及ぼすことが示された.しかし,BPAに関しては急性実験ではけいれん準備性への影響は認められなかったが,周産期に暴露したラットのけいれん準備性に影響を及ぼしていたことから,その機序はEBの場合とは異なることが示唆された.
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