研究概要 |
放射線治療後の再発腫瘍の多くは,放射線抵抗性の低酸素細胞の再増殖が主因と考えられている.本研究では,これまで行ってきた^<31>P-MRSやMRIによるperfusion imageにくわえて,低酸素細胞マーカーによる低酸素細胞イメージングを用いて腫瘍の酸素状態を定量し,生物学的に最適な放射線治療法について模索した.また腫瘍に特徴的な癌関連遺伝子の変異が,腫瘍の低酸素状態とどのように関係するのかを解明することを目的とした.特に低酸素環境下でのアポトーシスに関与するp53の変異が,腫瘍に起こる低酸素状態にどのように変化するかを検討した. 治療前の腫瘍の低酸素状態を非侵襲的に定量化できれば,治療効果の予測や遠隔転移の確率を推測することが可能と考えられたため,実験腫瘍を用いて種々の低酸素評価法を試みた.電極を腫瘍内に挿入し直接酸素濃度を測定する方法や,31P-MRSなどの方法と比較して,低酸素細胞マーカーであるβ-D-IAZGPは,副作用も軽微で,腫瘍の大きさにかかわらず,その取り込みが評価可能であり,臨床上も有用性が高いと考えられた.子宮頸癌では,実際の腫瘍内の酸素分圧の低下が治療効果と相関することを明らかにした.また子宮頸癌組織内でのHIF-1の高発現が,予後不良因子であり,特に遠隔転移と有意に相関することを明らかにした.また,進行食道癌の化学放射線療法において,HIF-1とともにp53,p21,BAXなどのアポトーシス関連因子を解析した結果,初期治療効果ともっとも相関する因子はHIF-1であり,p53を介したアポトーシスを解析するよりも,低酸素を解析したほうが,治療効果を反映する可能性が示唆された.
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