研究概要 |
1.p53遺伝子型の異なるヒト腫瘍における放射線誘発アポトーシスの検討と炭素イオン線のRelative Biological Effectiveness(RBE)の検討:p53遺伝子型の異なるヒト腫瘍をヌードマウスに移植して,X線,重粒子線(炭素イオン線)の照射を行なった後,経時的に腫瘍を摘出して組織学的な検索を行ない,p53依存性およびp53非依存性アポトーシスの誘発頻度について検討した.p53野生型の2腫瘍ではアポトーシスが高率に誘発され,特に上衣芽腫で高率だった。p53変異型の膠芽腫では相対的に低率であったが,非照射対照群に比して有意に高く,p53非依存性アポトーシスの関与が示唆された.X線と重粒子線の線量依存曲線の比較から,アポトーシス誘発を指標とした炭素線のRelative Biological Effectiveness(RBE)を算出したが,p53野生型の2腫瘍では約3であったのに対して,p53変異型の腫瘍では大きくなる傾向(4以上)が認められ,p53非依存性アポトーシスの差が影響していると考えられた. 2.放射線感受性正常組織における放射線誘発アポトーシスと後期反応とRBE : C57BL/6(雄,8週齢)にX線,重粒子線の照射を行なった後,経時的に臓器を摘出して組織学的に検索し,精巣の精原細胞,小腸のクリプト細胞,海馬の神経細胞のアポトーシスの誘発頻度,照射後6か月の精巣の萎縮および精細管の造精能を検討した.炭素線のRBEは,早期のp53依存性のアポトーシスを指標とした場合約1.5-2.1,精巣の萎縮および造精能を指標とした場合は約1.2-1.6であった. 3.放射線感受性腫瘍の臨床的検討:放射線や薬剤によってアポトーシスが高率に誘発される悪性リンパ腫,胚細胞性腫瘍における放射線療法と化学療法についての検討をおこない,その有用性を明らかにした.
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