研究概要 |
経時的差分画像法はコンピュータ支援診断(computer-aided diagnosis : CAD)の一つで、撮影時期の異なる2枚の胸部単純写真の差分をとることで、新たに出現した病巣や既存の病巣の経時的変化を強調して描出する方法である。この研究では、胸部単純写真における日常臨床で遭遇する様々な病態において,本法の有用性について検討した. まず後ろ向き研究として読影実験を行った。実験には日常臨床で遭遇する様々な病態、たとえば結節影や限局性浸潤影,びまん性陰影の20例と正常20例の計40例を用いた。使用したシステムは既に商品化されているTruedia/XR(三菱スペース・ソフトウェア、日本)である。8名の放射線科医が、経時的差分画像なしとありで読影し、過去画像と現在画像での変化の有無の確信度を5段階で表した(1:確実に変化あり,2:おそらく変化あり,3:変化がある可能性あり,4:おそらく変化なし,5:確実に変化なし)。読影者の診断能は、読影経験の少ない読影者において特に向上することが明らかとなった。 次に前向き研究として、実際の日常診療でこのシステムを使用しその有用性をに検討した。各放射線科医がまず経時的差分画像なしで読影し、変化の有無について5段階評価した。その後、経時的差分画像をみて再度5段階評価を行い、所見の変更を必要に応じて行った。日常診療における単純写真は正常例や経時的変化がない症例が多いが、読影者が評価をなしからありに変更したもの、すなわち見落とし症例と考えられるものや、ありからなしに変更したもの、すなわち偽陽性だった症例が少なからず認められた。 これらの結果は、日常臨床で遭遇する様々な病態における本システムの有用性を示すもので、特に読影経験の少ない読影者において極めて有用と考えられる。
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